【医師向け】かかりつけの患者さんから水虫の相談が。どう対応する?
こんにちは、皮膚科医ボブです。
このブログは医師による副業をメインコンテンツにしていますが、サブコンテンツとして皮膚科情報も扱っています。
今回の記事は皮膚科以外の診療科の先生や研修医の先生に役立ててもらえると嬉しいです。
で、どう対応します?
それではタイトルにもあるように、医師(皮膚科医以外)が患者さんの水虫を疑った時にはどう対処すべきかを考えていきます。
あくまで私の個人的な意見にはなりますが、先生方にお伝えしたいのは
- 水虫疑いの患者さんに対してむやみに抗真菌薬を処方しないでほしい
- なにか処方するならば、ステロイド外用薬を処方してほしい
この2点です。

「治療するなってこと?」
「感染症にステロイド?」
「この皮膚科医、なに言ってんの?」
そう思う先生もいらっしゃるかもしれません。
ですが、言い間違いではありません。
なぜ抗真菌薬を処方しないで欲しいのか
その理由は、真菌の有無を評価せずに抗真菌薬を塗りはじめると、結果的に治療が長引くことがあるからです。
なので顕微鏡検査を施行いただき、糸状菌の存在を確認いただいた上で抗真菌薬を処方される分には当然なんの問題もありません。
むしろそれは完璧です。
けど、経験や器具がないとなかなか難しいですよね。
なぜ治療が長引くの?
上の説明ではあまりにもチープなのでもう少し詳細に説明させてください。
そもそも、水虫と湿疹はそっくりの見た目になることがあります。
合併することもしばしばです。
熟練の皮膚科医でもこれを見た目で完璧に鑑別するのは難しいです。
そのため私たち皮膚科医は治療を開始する前にまず皮膚の鱗屑(りんせつ)や水疱蓋(すいほうがい)を顕微鏡で観察して真菌の有無を確認します。
真菌がいれば水虫と判断し抗真菌薬で治療を開始しますが、真菌がみつからなければ湿疹or偽陰性の水虫と考え、ステロイド外用薬を開始します。
そして1.2週間後に再診してもらい、経過によっては再度水虫の検査を行うのです。
ですが、もし仮に短期間でも顕微鏡検査前に抗真菌薬を塗っていると「表面の真菌は退治できたけど角質深部の真菌はまだ元気」という状態になりえます。
このタイミング(抗真菌薬外用後)で患者さんが皮膚科を受診してしまうと、検査しても真菌が見つかりにくいです。
検査しても偽陰性になってしまう確率が高まるわけですね。
結局、短期間でも顕微鏡検査前に抗真菌薬を塗っている場合は
- 一旦外用を中止して頂き
- 数日後にもう一度受診してもらう
このようにお願いするハメになります。
その必要性を説明し、理解してもらうのは意外と一苦労です。
なるべく丁寧に説明しますが、言っていることは結局

「今日はなにもできないっす。数日したらまた来てね♪」
という内容です。
当然、中には怒ってしまう患者さんもいらっしゃいます。
これが気軽に抗真菌外用薬を処方しないで欲しい理由です。
水虫は感染症なのに、なぜステロイド外用?
続いて「なにか処方するならば、ステロイド外用薬を処方してほしい」理由をご説明させてください。
先程も書いたように、水虫っぽい皮疹をみても真菌が見つからなければ皮膚科医は湿疹or偽陰性の水虫と考えます。
ステロイドは周知の通り湿疹に対して非常に有効です。
偽陰性の水虫に対しては当然無効ですが、ステロイドの副作用で真菌の数が増加すれば、後日の診察時には検査がしやすくなる(=偽陰性のリスクが減る)というメリットがあります。
さらに、水虫と湿疹は比較的高頻度で併発します。
とりあえずステロイドで治療をしておけば、結果として水虫の症状だけが残ります。
つまり原因が分からない段階ではステロイド外用の方がメリットが大きいんです。
以上の理由から、水虫っぽい患者さんに対してなにか処方するのであればステロイド外用薬にして欲しいと考えている皮膚科医は少なくありません。
(※エビデンスを聞かれると苦しいところですが、私の育った大学医局では常識でしたし、他大学の真菌を専門にされている先生も講演で同じことをおっしゃていました。あまり論文で見かける話ではありませんが、皮膚科医の間ではある程度、市民権を得ている考え方だと認識しています。)
まとめ
実臨床でありがちな
「抗真菌薬出しとくね!治らなかったら皮膚科に行ってね!」
というのはなるべく避けて頂き
「水虫っぽいの?なんにも塗らずに皮膚科に行ってね!」
あるいは
「ステロイド塗ってみて、良くならなかったら皮膚科行ってね!」
と対応していただけると大変助かります。
(※トラブルを避けるために、ステロイド外用薬を処方する際には、一時的に水虫が悪くなる可能性もあると説明しておくことをオススメします。)
心の隅にとどめておいてもらえると嬉しいです。
それでは今日はこの辺で。
皮膚科医ボブ
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