【医師向け】皮膚科医がAGA治療について解説します!
こんにちは、皮膚科専門医のボブです。
このブログでは、サブコンテンツとして皮膚科情報も扱っています。
皮膚科以外の診療科の先生や研修医の先生方に役立ててもらえると嬉しいです。
さて今日は皮膚科情報として、
AGA:男性型脱毛症についてのお話です。

これからAGA診療に携わる医師が、勉強のとっかかりにしてもらえるように解説しているつもりです。
「患者さんへの説明に使いやすい」
「初学者の医学生でも理解しやすい」
ようにするため、極力簡単な用語で説明しています。
それでは早速参りましょう!
AGAとは?
Androgenetic Alopecia(アンドロジェネティック アロペシア)の略語です。
男性型脱毛症ともいわれていますが、要するに薄毛やハゲのことですね。
以前はあくまで身体的な特徴という扱いだったように思いますが、徐々にAGAという用語が世間に広まり、病気として認知されてきている印象です。
なぜAGAになるの?
AGAには主に遺伝と男性ホルモンが関与することがわかっています。
まず遺伝としては
- X染色体上にある男性ホルモン受容体遺伝子多型(遺伝子多型:遺伝子を構成するDNA配列の個体差のこと)
- 常染色体の17q21や20p11の疾患関連遺伝子
などがAGAの原因と判明しています。
要するに親からの遺伝が原因の一つ、という理解だけでOKです。
次に男性ホルモンについて。
男性ホルモンは筋肉やヒゲを発達させる方向に働きますが、残念ながら髪の毛に関しては薄くする方向に働いてしまいます。
このメカニズムは治療の話につながってくるので、少し細かく説明します。
まず、毛の根元にある毛乳頭という部分の細胞には、男性ホルモンを感受する受容体が存在します。
男性ホルモンであるテストステロンが毛乳頭細胞に運ばれると、5α還元酵素の働きによって活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
毛乳頭でDHTと男性ホルモン受容体が結合すると、毛が太く長く育ちきる前に抜けてしまうようになります。(これを「ヘアサイクルが早まる」と表現します。)
この結果、髪の毛が全体的に細く短くなり、最終的にAGAになっていきます。
またこの反応は前頭部や頭頂部の毛で起きやすいと言われています。
前頭部や頭頂部のハゲが多いのもうなずけますね。

ちなみに、ヒゲや側頭部や後頭部の毛髪に存在する男性ホルモン受容体はDHTにより成長が促進されます。
同じホルモンでも部位によって働き方が異なるんですね。(逆ならいいのに)
AGAの治療は?
原因はさておき、迷える薄毛男子達にとって大事なのは治療です。
そこで、AGA治療のターゲットを考えてみましょう。
先ほども述べたように、AGAの原因は「遺伝」と「男性ホルモン」です。
ただ現代の医学では遺伝に関しては避けることができません。
(技術的には遺伝子操作とかできるのかもしれませんが、倫理な問題もあるため現代ではまだ難しいと思います。)
しかし男性ホルモンに対してはどうやら対策が打てそうです。
先程、DHTと男性ホルモン受容体が結合することでヘアサイクルが早まるとお話ししました。
そこで「DHTと受容体の結合をどうにか邪魔すれば、ヘアサイクルが早まらずにすむのでは?」という発想が生まれます。
結果、5α還元酵素の働きを邪魔することでDHTの量を減らし、DHTと受容体の結合を防ぐという治療が生まれました。
この手法を使っている薬が今のところ一番効果が良いとされており、後述するフィナステリドやデュタステリドです。
(逆に側頭部や後頭部の毛、あるいはヒゲがうすくなる可能性はないのか疑問ですが、私が調べた範囲では分かりませんでした。)
この他にも様々な治療法が開発されていますので、次のページでは1つずつ紹介していきたいと思います。
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