医師のライフハック 外来時短法

2021年7月2日

こんにちは、皮膚科医ボブです。

今日は多忙と言われる医師が

外来業務時間をいかに短縮するか

というお話です。

時間はお金以上に大事です。

はじめに

経営的な視点で考えると、医師は短い時間で多くの患者さんを診なければなりません。

高いコストが取れる手術・手技などのある科は別かもしれませんが、外来で大人数を診察する事で経営を成り立たせている医師は大勢いると思います。

患者さんの立場で考えると、自分の症状・状況にあわせてベストな治療をしっかり検討してもらいたいし、なにより丁寧に診てもらいたいと思っています。

保険診療とはいえ自らも料金を払っていますし、自分の健康に関する事なので当然の感覚でしょう。

とはいえ患者さんも忙しい中病院を受診しており、無駄な待ち時間はストレスです。

となると、丁寧で的確な診察であるのは大前提として、その中でいかに削れる時間を削るかということが重要になってきます。

なので実際の外来業務ではどんな箇所を削る事ができるのか、考えていきたいと思います。

ただ外来業務は、医師だけの働きで成り立つわけではありません。

事務員や看護師の働きがあって初めて業務が回りますし、患者さんの存在も要素の一つとして考慮しなければなりません。

医師の業務に限って効率化を目指すのではなく、外来全体を俯瞰的にみながら考えていきたいと思います。

病院や診療所の受診

一般的な医療機関受診の際、患者さんは

  1. 受付・待合室で待機
  2. 診察室呼び入れ・診察・検査・治療・退室
  3. 会計・帰宅

という流れで動くのが一般的です。

これから行うのはこの1つ1つの要素に、削れる所がないかを確認する作業になります。

様々な規模の病院や診療所を想定して書きますが、当てはまらない部分はご自身の勤務先の状況を想像しながら読んで貰い、ぜひ参考にしてみて下さい。

受付・会計

まずは受付業務について。だいたい会計もかねているので一緒にお話します。

ここは病院の顔であり非常に重要なポジションです。病院の印象を左右する可能性があるので、ここで患者さんを待たせ過ぎて嫌な印象を持たせるのは避けたいところです。

大病院では一医師が口出しするのは困難かと思いますが、診療所レベルの規模であれば医師も積極的関わるべきです。

ですが複雑な仕組みにしていなければあまり削れる時間はないかもしれません。

強いて言えば、もし受付を1人で行っている場合は電話対応やクレーム対応が長引いた際に全ての流れが滞る可能性がありますので、そこのリスクマネジメントは必要です。

常時2人受付に人が居る必要はなくとも、受付の手が空かない時には看護師やクラークにも受付業務をこなすようにお願いしておいた方が無難だと思います。

逆に受付を2人用意する場合には、手が空いた時には診察の補助をお願いすることも可能でしょう。

予約システムの導入・診察券や問診票の電子化など、根本的にシステムを見直すのも良いと思います。

待合室

続いて待合室について。待合室のレイアウトを調整することも大切です。

椅子・観葉植物・本棚・テレビなどの配置はよく考慮して配置することをお勧めします。

効率化を目指す際にポイントになるのは、患者さんやスタッフの動線を確保する事です。

動線が悪いと人が動きにくく、呼び入れてから実際に入ってくるまでにも時間がかかります。

また呼び入れに気がつきにくい向きで座らせておくのも良くありません。

もちろん患者層によっても適した形は当然異なります。年代以外にも、車椅子の方や杖を使う方、付き添いの方に支えられながら移動する方など、様々な患者層が考えられます。

自院の患者層にあわせてベストな形を考える必要があるでしょう。

患者さんのプライバシーや全体の雰囲気など、他の要素に配慮するのも忘れずに。

診察室

ここからは今日の本題、診察室内のお話です。医師が一番関わる部分ですね。結構細かいことも書いています。

かご

患者さんが荷物や上着を置く場所(ここでは「かご」とします)の位置は大切です。

患者さんが診察室に入った時、一目で「ここに荷物を置けばいいんだな」と思える様な位置にかごを用意しましょう。

かごは用意してあっても、入室したばかりの患者さんからすると死角に置かれている診療所を経験したことがあります。(入口に近すぎるなど。)

置き場所を指示しても、死角にあるものを認識するのは意外と時間がかかりますので、タイムロスにつながります。

患者さんの椅子

患者さんは一人で受診するとは限らず、家族が一緒の場合もよくあります。

当然椅子は一つでは足りませんが、複数用意してもどこに座ればいいか迷わせてしまい、タイムロスにつながります。

なので適切な椅子の数は非常に難しいです。

個人的には、一つメインの椅子を用意して、同伴者用にも折りたたみの小さい椅子を一つ用意するのがベストだと思います。

3人以上で受診する場合は立っていてもらうかベッドに腰掛けてもらうようにしています。

あるいは張り紙などを用いて診察室に入る人数を2人までに制限する方法も1つです。

もちろん重症疾患の説明や手術説明などを始め、家族みんなで話を聞きたいケースもあるので臨機応変に対応しましょう。

杖置き場

小児科などの特殊な場合を除いて、高齢者の受診を想定する診療科は多いと思います。

多くの場合、杖歩行の高齢者は、診察室で椅子に座る前に杖を置こうとします。

よくあるのが机や壁に立て掛けようとするも倒してしまい、それを拾ってまた倒す、と繰り返す、という光景です。

高齢者は当然動作が緩慢ですし、申し訳ないですが時間の無駄です。

分かりやすい所に杖を置く場所を用意してあげると喜ばれますし、無駄な時間が省けます。

個人的にかなり有効な方法だと思っています。

診察

これも診察室内の難しい問題です。季節にもよりますが、大体ここでもたつきます。

皮膚科の話をすると、視診と触診が超重要なので診察希望部位をまず診たいわけです。

極端なことを言えば、まず一度視診してから経過などの話を聞きたい。

以下は診察の流れの一例ですが

  1. 入室
  2. 視診で鑑別を判断
  3. 必要な情報を収集(既往歴・常用薬)
  4. 検査 or 診断
  5. 病態・治療を方針説明 & 処置
  6. 退室

の順序が理想的です。

なので私の場合「いきなりで恐縮ですが、まず今日見て欲しい場所を出していただいてもよろしいですか?」と声かけするようにしています。

脱ぐのに時間がかかる場合は手伝ったりもしますが、これ以上の改善策はいまのところ見つかっていません。

もし可能な状況であれば診察室を2つ以上使用するのは良い方法です。

診察室のブースは裏が職員用の通路として繋がっている場合が多いですよね。

隣り合う2つのブースが使えるのであれば、片方で患者さん①の診察している間にもう片方のブースに次の患者さん②に入っていてもらいます。

さらに患者さん②には可能な範囲で診察部位を出して待っていてもらうよう誘導します。

医師は患者さん①に対する診察・診断・カルテ記載・看護師への指示を終えたら、速やかに次の診察室へ移動します。

前のブースでは患者さん①が残りの処置や説明を看護師さんから受けた後に退室します。そして次の患者さん③を入れて待機していてもらう、と繰り返す方法です。

できるのであれば、これに勝る時短方法はありません。

ただもちろん、ここでもプライバシーへの配慮は忘れずに十分気をつけましょう。

カルテのセット登録 

電子カルテを導入しているのであればタイピングは必須スキルだと思いますが、これに加えてカルテのセット登録を強くオススメします。

頻度の高い疾患に対しては

  • カルテ記載
  • 病名登録
  • 検査
  • 処置
  • 処方
  • 指導

などのコストをセット登録(ワンクリックで一括入力できるように)しておけば相当時間短縮になります。汎用性の高いセットを作る事が好ましいですが、同じ疾患でも何パターンか方針がある場合はパターン別に作っておく方が良いです。

例:

【疾患】足白癬+足爪白癬 初診 ネイリン適応なし

S)足の皮膚の皮が剥けている。足の爪にも白色変化あり。○頃から自覚。

O)左右 趾間部 足底 鱗屑あり なし  左右第○趾爪 楔状白色変化

顕微鏡検査:糸状菌陽性 肝機能障害あり 常用薬にワーファリンあり 

A)#足白癬 外用加療にて治癒見込める

#足爪白癬 内服加療望ましいが適応なし 外用加療にて治癒目指す

P)外用加療開始 接触皮膚炎に対する注意説明 外用薬は○を選択 次回○頃再診いただく

検査:糸状菌顕微鏡検査コストをセット登録 処置:なし

処方:セット登録 指導:なし

【疾患】足白癬+足爪白癬 初診 ネイリン適応あり

S)足の皮膚の皮が剥けている。足の爪にも白色変化あり。○頃から自覚。

O)左右 趾間部 足底 鱗屑あり なし 左右 第○趾爪 楔状白色変化

顕微鏡検査:糸状菌陽性 肝機能障害なし 常用薬にワーファリンなし

A)#足白癬 外用加療にて治癒見込める。

#足爪白癬 内服加療にて治癒見込める。既往・常用薬に問題なく、ネイリン適応あり

P)外用加療開始 外用薬は○を選択 内服薬はネイリンを選択                   

次回○頃再診いただく 採血予定あり

検査:糸状菌顕微鏡検査コストをセット登録 処置:なし

処方:セット登録 指導:なし

上の例は足白癬と足爪白癬が合併することが多いため作ったセットです。

爪白癬治療用の内服薬ネイリン®︎は、肝機能障害がある患者やワーファリン内服中の患者に対して慎重投与とされていますので、患者さんによっては爪も外用で治療することがあります。

その違いをいちいち記載するのも面倒なので、セットを分けて登録しているという一例でした。

このように少しずつ異なるバージョンをそれぞれ用意しておくと非常に便利です。

外来業務がぐっと短縮できる分、患者さんに向き合える時間が長くなるた患者満足度も上がるのではないか思います。

あとは自身の診察技術や鑑別能力によるところも大きいので、各々の分野の研鑽が重要なのは言うまでもありませんね。

その他

これらの意識を職員に共有してもらい、診察前後での情報収集・情報整理・処置・患者誘導など、様々なところで協力してもらうことも不可欠です。


まとめ

いかがだったでしょうか?

今日の内容は私の個人的な考えばかりで偏りがあると思います。診療科によっては全く参考にならない部分もあったかもしれません。

大事なのは自分の勤務先にあったよりベストな形を模索し続けることと、スタッフみんなで同じ目標を持って業務に当たることなのではないでしょうか。

私自身スタッフや患者さんの声も素直に取り入れながら、よりよい医療を提供できる様努力していきたいと思っています。

もし上記の他にもオススメの工夫があればコメント欄などで教えてください!よろしくお願いいたします。

それでは今日は、この辺で。

皮膚科医ボブ

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