#帯状疱疹 患者さんへの説明方法

2021年7月2日

こんにちは、皮膚科医ボブです。今日は皮膚科医らしい話をしたいと思います。

昨年、2020年は帯状疱疹の患者さんが増えた気がしました。(※個人の感想です。医学的根拠はありません。)

帯状疱疹はストレスや疲れをきっかけに発症するとされており、新型コロナウイルスの猛威やそれに伴う社会的変化が帯状疱疹の患者さんを増やしたのではないかと推測しています。

帯状疱疹で皮膚科外来を受診した患者さんに

皮膚科医ボブ

帯状疱疹とはどんな病気かご存知ですか?

と聞くと

患者さん

名前は聞いたことがあるけど、詳しくは知らないです。

というお返事がほとんどです。

なので私の外来ではまず帯状疱疹の発症メカニズムに関して簡単に説明するようにしています。

今日は私が普段口頭で説明している内容を文章に起こしてみました。皮膚科以外の先生でも帯状疱疹を診る機会は多いと思いますので、患者さんへの説明の際に参考にしてもらえたら嬉しいです。

それでは、どうぞ!


帯状疱疹とは 外来での私の説明

帯状疱疹とは

帯状疱疹とは、水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスの感染症です。子供の頃、水疱瘡(みずぼうそう)にかかったことがある人は多いと思いますが、それと同じウイルスが原因です。

(知らなそうな人には、「水疱瘡(みずぼうそう)は水痘(すいとう)の別名です。」とも付け加えます。)

水疱瘡になると熱が出て、全身に水ぶくれなどの発疹が出ますよね。そして熱が下がり皮膚の症状も治っていきます。ただ、症状は治っても体の中からウイルスが完全にいなくなるわけではありません。ごく少量のウイルスが神経節と呼ばれる神経のふしに残り、体の中で細々と暮らし続けるんです。

普段はウイルスが活動しないように人間の免疫力で抑え込んでいますが、ストレスや疲れがたまったり、免疫力が落ちたりすると、抑えがきかなくなってウイルスが再び活性化します。そうして起きるのが今回の帯状疱疹です。

現在の症状について

ウイルスは、神経と皮膚に症状をきたします。

神経の症状は痛みやしびれです。ピリピリ、チクチクといった軽い痛みから、ズキズキと強い痛みが出る事もあります。稀に麻痺などの症状などがでることもあります。

皮膚の症状としては赤みや水疱ができます。痛みと皮疹が同時に出ることもありますが、痛みからはじまり、遅れて皮疹がでてくる場合もあります。

帯状疱疹は全身どこにでも生じます。これは、ウイルスがどこの神経節に潜んでいたかによって決まります。

人間の知覚神経は脳や脊髄から枝分かれしていますが、それぞれの枝が図(下参照)のように帯状に支配領域をもっています。帯状疱疹の症状はこの知覚神経の分布に一致して出てくるわけです。

日本緩和医療学会HPより 図1 デルマトーム

結果として「帯状(おびじょう)」水「疱」などの皮「疹」ができるから、帯状疱疹という名前になったんでしょうね。

なお神経の枝は脳や脊髄を中心に左右それぞれにあるため、帯状疱疹の症状は通常片側だけにあらわれます。

(上の図をさしながら)あなたの場合は 右or左 の〇〇神経(三叉神経、頚神経など)の〇番の支配領域に症状がでていますね。

今後の症状について

皮膚の症状は通常1週間程度で「みずぶくれ」が「かさぶた」に変わります。軽い症状であればそのまま治っていきますが、炎症が強い場合はかさぶたの後に皮膚潰瘍になったり、傷跡が残る事もあります。

痛みの程度は個人差が大きいですが、痛みが後から強くなったり長引くことがあります。早い段階で痛み止めを飲んでおいた方が、痛みが酷くなるのを予防出来るといわれています。

その他

ケースバイケースではありますが、だいたいこのような順序で説明をします。この後に患者さん自身の痛みの程度や食事摂取の有無、睡眠状況の有無、治療法の説明などを行います。

(もちろんこんな長々と話しを聞いていられる状況にない重症の患者さんにはすぐ治療を開始し、落ち着いてきた時点で説明しています。)

具体的な治療方針や合併症に関しては患者さんにより異なるので割愛させて下さい。最後に、よくある質問をまとめて終わりたいと思います。


よくある質問

Q.周囲の人に感染させてしまう心配はありますか?

結論から言うと、周囲の人が水疱瘡になる可能性があります。帯状疱疹になることは通常ありません。

帯状疱疹にかかった人の免疫不全の有無と播種性かどうかにより感染力は異なりますが、帯状疱疹は水疱瘡より弱い感染力です。ただ帯状疱疹の発疹出現3日前より唾液中にウイルスが排泄されるため空気感染する可能性があります。

そのため周囲にいるウイルス未感染の人は、水疱瘡になるリスクがあります。免疫低下状態の人、お子さん、妊婦さんは要注意です。

また皮疹自体にも接触感染のリスクがあるため周囲の人はなるべく触らないほうが良いです。水疱が痂皮化したら接触感染はおきません。感染予防方法としては、

  • 発疹はガーゼなどで覆う
  • 発疹に触ったら手洗い、手指アルコール消毒

などが有効です。

お子さんや免疫力が弱い方が周囲にいる場合は、さらに追加して帯状疱疹になった人がマスクをしたり、同じ部屋で過ごさないなど、接触の機会を減らすことをお勧めします。

Q.お風呂には入らない方が良いですか?

入浴は可能です。石鹸も使用して大丈夫です。ただ家族への感染には気をつける必要があります。家族の中で一番最後に入浴しましょう。毎日風呂掃除もしてください。洗濯物は他の人の洗濯物と一緒に洗っても問題ありません。

Q.痛みはいつまで続きますか?

人によってまちまちです。痛みが長く続くと帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。とある研究では、帯状疱疹に罹患した50歳以上の患者の約2割が帯状疱疹後神経痛に移行したと報告されています。(Takao Y, et al. J Epidemiol. 2015; 25(10): 617-625.より)

高齢者の方が長引きやすい印象です。酷い場合、数年痛みや違和感に苦しむ人もいますが、個人差が大きいのでなんとも言えません。

なるべく痛みが長引かないよう、早期に痛み止めを開始して様子を見ていきましょう。

Q.痛い時は冷やした方がいいですよね?

冷やすと痛みが増悪しやすいとされていますので、逆効果です。痛い時はあたためる事をオススメします。お風呂に入ったり、暖かいタオルを当てると良いです。湯たんぽなども有効だと思いますが、火傷には十分注意して下さい。


まとめ

いかがだったでしょうか?なるべく分かりやすさを意識していたら、いつの間にかこんな感じで説明するのがルーティーンになっていました。ちょっと長いかもしれませんが、これでも最低限にしているつもりです。

皮膚科以外の先生でも帯状疱疹を診る機会は多いと思いますので、患者さんへの説明の際に参考にしてもらえたら嬉しいです。

それでは今日はこの辺で。

皮膚科医ボブ

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