医師の進路 退局

2021年7月2日

こんにちは、皮膚科医ボブです。

今日は医師にとっての大きな分かれ道である『退局』に関するお話をしたいと思います。

『入局』に関してはこちらの記事をご確認ください。

もしかしたら普通に退職や離職という表現をする方もいるかもしれませんが、ここでいう退局とは、大学医局を辞めることを指しています。

以前は私も大学病院の皮膚科医局に所属していました。

入局した頃は「御礼奉公も兼ねて10年くらい所属させてもらって、その後開業かな…」なんて思っていましたが、家庭の事情もあり6年目で退局しました。

退局すると決めてから、教授の許可を得るまでの期間(私の場合は約1年)はとてもストレスフルでした。いつ、どのように伝えるか。まず誰に伝えるか。毎日のように考えていました。

同様に悩んでいる先生方もたくさんいると思います。今日は私の経験談も踏まえ退局に関する情報を書き出していますので、これから退局を考えている先生はぜひ参考にしてみて下さい。

医局はいつがやめどき?

自分が辞めたい時こそがベストのタイミング

まず、いつがやめどきなのかが議論になると思います。

一般的には専門医を取得し数年経過した時結婚・出産などのライフステージが変化した時親の介護などで辞めざるを得ない事情が生じた時教授が変わった時などが、多くの人が辞めるタイミングだと思います。

そしてどんな理由で辞めるにせよ、多くの人は辞めた後も医局と良い関係を保っておきたいものです。なので辞めても迷惑がかかりにくい、もしくは辞めざるを得ないと思ってもらえるようなタイミングを皆探っています。

ですが、そんなタイミングは本当に存在するのでしょうか?

医局は大小あれど数多くの人間が所属しており、教授や医局長はその全員の人事について毎年考え、調整しています。

しかし医局員にもそれぞれ事情があります。移動したくない人・移動したい人、長く勤めたい人・早く退局したい人、妊娠して今後仕事を辞めたい人・産後すぐに復帰したい人、本当に千差万別です。

その全員の希望を叶え、調整するのははっきり言って不可能です。つまり人事の観点からすると、大量に人が余っていない限り、いつだって辞められたら困るんです。(今後は特に都市部で医師が飽和してくるとされているので、都市部の医局は辞めやすくなるかもしれません。)

となると、辞めるタイミングを見計らっているといつまでも辞められない可能性が出てきます。なので、もちろん周囲への気遣いは大事ですが、基本的には自分が辞めたいタイミングで退局を申し出るのがベストだと考えます。

そもそも長く所属していると忘れがちですが、何かしらのメリットがあるから入局したはず(専門医を取れる・博士号を取れるなど)ですので、それらを十分享受したタイミング、もしくはその見通しが立ったタイミングが退局準備の始め時と言えるでしょう。

私が医局に所属した理由は、皮膚科専門医を取得する為でした。なので私は専門医取得と同時期に退局を申し出ました。専門医を取らせてもらったのにすぐ辞めて申し訳ないという気持ちもありましたが、なによりも家庭を大事にするという選択をした結果です。教授には自分の置かれている状況や気持ちを丁寧に説明し、幸いにも円満に送り出してくださいました。

実際の退局方法

それでは私の体験談を含め(身バレしない範囲ですが)、実際の退局までの流れを説明していきます。

周囲への根回し

これはファーストステップであり地味に大切です。

仲が良い医局員同士であれば今後どういうライフプランなのか、世間話程度でも話す機会があるでしょう。その際に、いつかは辞めたい、いつ頃辞めようと考えている、などとほのめかしておくと良いです。

具体的である必要はありません。これが教授まで伝わることはありませんし、周囲の人間に「いつかは辞めるつもり」「大学に残り出世していくつもりはない」と認識してもらうことで辞める時の反発が少なくすむと思います。

直属上司・医局長への相談

医局の体制や置かれている状況にもよりますが、退局の意向を伝える時は一般的に直属の上司に伝え、それをさらに上に掛け合ってもらうのがよしとされています。

私個人の考えとしては教授との距離感が近い医局であれば教授に直接伝えてもいいのではないかと思っていますが、直属の上司や医局長の面子もありますので注意しましょう。

また、医局ごとに暗黙のルールがあるかもしれませんので、同じ医局で最近辞めた人がいれば、どのようにしたか聞いておいた方がベターです。

伝える時期としては、遅くとも退局の3ヶ月前、できれば半年前には伝えた方が良いでしょう。法律的にはもう少し遅くても大丈夫みたいですが、医局はここでも独特なルールがあったりしますのでこれも確認しておきましょう。

教授への相談 ポイントは4つ

直属の上司と医局長への相談を済ませたらついに教授への相談です。最終的な退局可否の判断は教授が下すことになります。菓子折りの一つでも持っていき、退局の意思を丁寧かつ明確に伝えましょう。

その際のポイントとしては

理由を明確に説明すること

「辞めたい」場合はその理由をしっかりと説明しましょう。応援してもらえる様な理由があるとベターです。「辞めざるを得ない」という場合も一見、向こうに選択権を与えない様にも思えますが「辞めないで済むように仕事内容を配慮する」などと言われて退局させてもらえない危険があるので注意です。

交渉に持ち込まれたら、明確でない約束は受けないこと

「あと1年だけ居てくれ」などと言われた場合はまだ良いですが、「後進が育つまで」など明確でない期日を設けてきた場合は交渉に応じない方が良いです。なし崩しで対局まで数年かかる可能性があります。

辞めた後のプランも説明できるよう用意していくこと

私はこれを聞かれました。私のことを心配して下さっての事でした。正直にいうと転職先も準備して面接まで済ませていたのですが、便宜上「紹介会社を通じてこれから探します」と答えました。退職前に次の職場を準備していると知られたら心証が悪いと思ったからです。お世話になった教授に嘘をつくのは心苦しかったですが、全て正直にいうのも失礼な可能性があるので気を付けましょう。

円満退職が理想だが、最後は嫌われる勇気を持つこと

もちろん円満退職が理想です。退職後も同じ医療圏にいるつもりならなおさら大事です。ですが、医師は医師免許さえあればどこでも働けます。最悪、診療科を変えたっていいんです。どうしても辞めたい場合には教授に嫌われてしまってもいいと思います。絶対に生きていけます。極論かもしれませんが、最後は開き直って気楽に相談するのがいいと思います。

まとめ

以上が退局に関する私の体験談と考えです。いかがでしたか?

今は医師の職場斡旋をしてくれる仲介会社も多く、探せば多くの求人が見つかります。そして、それらの求人は待遇面で大学医局に勝るところが非常に多いです。

患者さんのために尽くすことも尊いことですが、自分や家族の人生も大事にして、バランスをとっていけたらいいのかなと思います。

この記事が、医局を辞めたい先生方の力になってくれれば幸いです。

それでは今日はこの辺で。

皮膚科医ボブ

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