医師の進路 入局
こんにちは。皮膚科医ボブです。今日は大学医局に入局するメリットとデメリットを考察したいと思います。
あらかじめ言っておくと、私は去年、大学の医局から退局しました。その体験談は別の記事でお話する予定です。今回はその前段階の考察として、医局について考えてます。医師全体向けというよりは、これから入局を検討している研修医や医学生向けの記事になります。
いいから退局について早く知りたい!という方はこちらからご覧ください。
これから入局を検討している人へ
この記事を読んで頂くのは研修医や医大生を想定していますので医局に関する詳細な説明は割愛します。
みなさんご存知の通り医師は臨床研修終了後、診療科を選択肢それぞれの専門に分かれます。その時の選択肢の一つとして医局への入局という道があり、おそらくこの道を選ぶ人がもっとも多いです。
もちろん医局に所属するのにはメリットとデメリットがありますので、それぞれ見ていきましょう。
医局のメリット
専門医や博士号の取得
医局の一番のメリットとして専門医取得へのアプローチがしやすいことが挙げられます。
ある一定以上の規模の病院であれば大学医局でなくとも専門医は取得可能ですが、最も門戸が広いのはやはり大学病院でしょう。入局先を選ばなければ就職は容易いと思います。(新専門医制度開始に伴い入局人数に制限があり、都内の人気医局などへの就職は難易度が高いです。)
また博士号取得には大学院へ進学するのが一般的ですが、こちらも大学医局に所属することでスムーズに進学しやすいです。(医局に所属せずに大学院だけ入るケースもあるんですかね?リサーチ力不足でわかりませんでした。すみません。)
ただいずれも、臨床医学で生きていく上で本当に必要な資格であるか、という点は疑問が残ります。とりあえずみんなが専門医とるから自分もとる、という先生も多いのが実際のところではないでしょうか。
留学
留学も大学医局からの方がアプローチしやすいかと思います。やはり大学同士、あるいは教授同士などのコネがあってこその留学でしょう。市中病院でも海外にコネをもつ上司がいることもありますが、そういった病院は大学よりも留学の競争率が高いとされています。(あくまで一般論です。そもそも大学の競争率が低いとも限りません。)
行動力があれば海外の大学あるいは教授へ直接アプローチして留学する手もありますが、非常に大きなエネルギーを要することは想像に難くありません。確固たる研究テーマがある人にはいいかもしれませんね。ただそうゆう人は自分をしっかり持っているので、そもそも退局するしないで悩むことは少なそうですね。
経験の幅
大学医局には先端の医療機器があったり、難解な症例や重症例が来ることも多いです。通常業務をこなしているだけでも他の施設では得られないような貴重な経験を数多く積むことができます。また市中病院ではそういった難しいケースでも自分でなんとかしなければならないことが多いですが、大学病院では様々な疾患の専門家に相談できます。そこで得られる経験も若い医師にとって大きな財産になり得ます。
また通常の臨床以外でも、治験に参加できたり勉強会を頻繁に開催していたりと、アカデミックな経験も多く積むことができますね。
休みやすい
医局の体制や教授の方針にもよりますが、ある程度以上の人数が所属していれば急な体調不良でも外来を代わってもらえたり、出産関連の休みが取りやすい傾向にあると思います。この点は大学だから良いわけではなく人数が多いことが良いとも言えます。人数が少ない、あるいは休みを極力取らせない方針の医局もあると思うので、そこは要注意です。
良いアルバイトの斡旋
医局は通常、周囲の病院に多くの医師をアルバイトで派遣しています。稀に紹介会社を経由するよりも割の良いバイト先を斡旋してもらえることがあります。困った症例が来ても自分の医局宛てに紹介して上司に相談することが可能なので、心強いです。
医局のデメリット
人事異動
医局の関連病院がどの範囲まであるかにより異なりますが、別の地方の関連病院に飛ばされることがあります。昔よりはだいぶ少ないと思いますが、急な移動を指示される医局もまだあると聞きます。(実際に聞いた酷い例として、3週間後に東京から九州の関連病院に移動するよう指示されたという先生がいました。そんなこと言われても引っ越し準備が間に合いません。。。)
さらにこれが数年おきに繰り返される可能性があります。勤務する病院により給料ももちろん変わります。家族の生活もありますし、肉体的にも精神的にも経済的にも、大きな問題ですよね。
そんなの普通の企業でもあることなのかもしれませんが、医者は医師免許があれば医局に属さなくとも食うに困らないので、不満に感じやすいです。
症例数・仕事量
メリットに難しい症例を経験できることをあげましたが、逆にcommon diseaseに関しては経験が少なくなる傾向があります。大学病院で軽症例ばかり診るわけにもいきませんので当然ですね。簡単な症例を診る能力がつかないという意味ではありませんが、少ない症例を大人数の医師で取り合うという状況は起こり得ます。しかし意外と臨床以外の仕事量(大学の講義・試験監督・書類作成など)は多く、暇な訳でもありません。医者の仕事に集中したい!という先生には不向きな点かもしれません。忙しさに関しては所属先によります。まちまちです。大学でも市中病院でも、忙しい所は忙しいし、暇な所は暇です。
給与
大学は、やっっっすいです。
5-10年目の中堅医師の年収を比較すると、市中病院が1500-2000万に対し、大学病院が500-600万といったところです。バイトがあるので実際の所得はもっと増やせますが、
- 大学病院に勤務→バイトしないという選択肢がない
- 市中病院に勤務→バイトしたければすれば良い
ぐらい違いがあると思います。ちなみにフリーランスのや自費診療のみ行う医師はもっといい給料かもしれませんね。
これから入局する人へ
とまぁ、つらつらと色々書きましたが、医局に所属するのは決して悪ではないです。
前述のようにそれなりにメリットもあります。なんなら医局に入るのは医師のキャリアの王道で、1番普通の選択です。そのことを踏まえた上で、ご自身のキャリアを良く考えて選択してほしいと願っています。
医師がキャリアにおいて実現したいことは多岐にわたります。人により様々です。やりがい、資格や専門医の取得、スキル、研究、学会活動、役職、後進指導、趣味の時間、休暇、収入etc.
大事なのはそれらの優先順位を自ら決めるということ。
例えば、譲れない上位3つのポイントを絞る。それを軸として今後のキャリアを考える。その軸に照らし合わせれば、医局に入るのが良いのか、それとも医局の外でキャリアを歩んでいく方が良いのかを検討しやすくなりますよね。そうやって自ら選んだ選択肢なら、きっと後悔の少ない人生にできるんだと思います。
皆様の医師人生が、素晴らしいものになることを願っています。
そして冒頭にも書きましたが、医局の辞め方についても別の記事でお話ししたいと思いますので宜しくお願いします(台無し)。
それでは今日はこの辺で。
皮膚科医ボブ
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