医師の進路 皮膚科と形成外科の違い

2021年7月2日

こんにちは。皮膚科医ボブです。

今日は医師の進路選択に関するお話をさせてください。

私は現在皮膚科医ですが、研修医時代には皮膚科医になるか形成外科医になるかで悩みました。

というのも皮膚科と形成外科は対象疾患が少しかぶる部分があるためです。(傷・褥瘡・腫瘍・美容など)

今回は、当時の私がどのようにして皮膚科医になることを決めたのか、それぞれの診療科の特徴を交えながらお話していこうと思います。

当時の私のように、どちらの診療科に進むか悩んでいる研修医の先生がいれば、参考にしてもらえると嬉しいです。他の科で悩んでいる先生でも参考になる部分はきっとあると思います。

それでは参ります。

はじめは内科医志望(?)

まず私は医師免許を取得した時点でぼんやりと考えていたのは、「内科医になろうかなぁ」程度の事でした。

親が内科で開業していたこともあり、考えていたというよりは、自然とそうなるものだと思っていました。

今考えると恥ずかしいですが、完全に思考停止していますよね。

その程度の、なんちゃって内科医志望の研修医でした。

そんな中、研修が進むにつれ救急外来で縫合手技を数多くこなすようになりました。

縫合手技は奥が深く、上級医が簡単そうにやっている事が、当時の自分にはなかなかできませんでした。

ただ、やればやるほど少しずつ上達し、私は縫合手技にハマっていきました。

そこで、自分の適正は内科ではないのでは?という疑問が芽生え、改めて進むべき診療科を考えるようになり、自分の思考を書き出してみることにしました。

自分が進みたい診療科は

  • 幅広い年代の患者さんに直接触れ合い、コミュニケーションをとれる
  • 縫合などの細かい手技を数多く実践できる
  • 最終的に、開業可能
  • QOLはそれなりに大事にしたい

進みたくない診療科は

  • 自分や家族の人生をないがしろにするレベルでQOLが低い
  • 患者さんとコミュニケーションがとれない

これが自分の進む診療科に求める最低条件でした。

これらを満たす診療科として、マイナー外科系の診療科に絞って考えることにしました。

当時思いついたのは、形成外科・整形外科・皮膚科・耳鼻科の4つです。

泌尿器科や産婦人科、小児外科などもマイナー外科ですが、患者さんの年代や性別に偏りがあると感じたので除外。また眼科は親戚に眼科医がおり、実家の近所で開業していたため除外。(当時は実家の近くで開業する可能性を残しておきたかったんです。)

ここからさらに、整形外科や耳鼻科には開業後に手術をするのは困難になる可能性が高いと考えました。

となると、開業後も小腫瘍の手術ができる形成外科と皮膚科に絞られたわけです。

しかしこの2つの診療科はどちらも褥瘡や傷や皮膚腫瘍を診ることがあり、守備範囲が少し似ています。

もちろん違いはあるんですが、共に私の希望は叶えられそうに感じます。

私はどちらを選択すべきか悩んでしまいました。

皮膚科医?形成外科医?

そこで、

・A大学病院 皮膚科(1000床)に1ヶ月

・A大学病院 形成外科(1000床)に2ヶ月

それぞれ研修出来るよう、ローテーションを組みなおしてもらいました。

私の研修していた病院はそこら辺がフレキシブルでした。

さらに追加で

・市中総合病院 皮膚科(150床):1日

・開業クリニック 皮膚科(無床):半日

・A大学付属病院 形成外科(800床):1日

・B大学病院 形成外科(800床):1日

にもアポをとり、見学に行きました。

大きい病院はともかく、研修医が個人的にクリニックの見学をしに行くケースはあまりないみたいですが、熱意を持ってお願いしたらすんなりOKを貰えました。

開業医になる事を視野に入れていた私には、様々な規模の病院を見学させて頂けた事がとても有益でした。

これは医師としての自らの将来像を探すという意味で有効な手段だったと思います。

迷惑にならない範囲で、クリニックだろうがどこだろうが、皆どんどん見学させて貰えばいいと思います。

少し話が脇道にそれましたが、この中での学びや感じた事をまとめると

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皮膚科

・希望通り、手技は多い(小腫瘍切除、生検、比較的大きい手術も可能な場合あり)

・意外と救急疾患が多い(壊死性筋膜炎などの重症細菌感染症、膠原病や水疱症の重症例、熱傷など)

・皮膚腫瘍を含め、皮膚の変化に関する診断能力が高い

・病理診断も病理医任せではなく、自分で組織を確認する

・臨床所見から直接診断に結びつけるSnap diagnosisの概念が自分の性に合う

・開業志向のDrは多い(ライバルが多いかも)

・外来の診療単価が低い

形成外科

・希望通り、手技は多い(小手術~大手術まで)

・救急疾患は少ない(トップの方針による)

・皮膚腫瘍に関する診断能力がやや低くなりがち

・再建を専門にすると乳腺外科・頭頸部外科等とのコラボで手術する事がある

・個性派のDrが多い

・開業も不可能ではないが、形成外科医に人気の選択肢ではない(ライバルは少ない)

共通点

・QOLは悪くない。(ただし皮膚科の方がより良い)

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働く地域や病院によって違う部分もあるため一概には言えませんが、私が当時感じたのはこんなところです。

この中で私は皮膚腫瘍診断能力の差に着目しました。

たしかに形成外科の先生は手術が上手でした。

しかし、手術前の皮膚腫瘍を鑑別・診断する能力に関しては皮膚科の方が数段上だと思いました。

この違いはダーモスコープを操れるか否か病理組織を毎回自分で確認するか否か

という2点により生まれるんだと思います。

形成外科医は 肉眼所見(+画像所見)→手術→病理レポート確認

皮膚科医は  肉眼所見+ダーモスコープ所見(+画像所見)→手術→病理組織所見を自分の目で確認

このような違いがあるので、皮膚科医の方が同じ皮膚腫瘍に対して多角的にアプローチします。

皮膚腫瘍に詳しくなるのは当然だと思います。(詳しく勉強されている形成外科医もいらっしゃると思います)

当時の私はこの点を非常に魅力的と感じ、皮膚科医になることを選択しました。

悩んでいる診療科の特徴を書き出し、その中でも特に優先したい・譲れない点を明確にしていったのが良かったんだと思います。

専門医取得に関して

もうひとつ、診療科を決める要素として専門医取得の難易度も重要だと思います。

そもそも専門医を取るべきか否かという事も問題ですが、専門医を目指すという前提で話を進めます。

もちろん専門医取得は何科でも大変なんですか、大変さの度合いは少なからず異なります。

試験の難易度だけでなく、研修期間の長さやこなさなければならない課題等、様々な違いがあります。

もちろん何を大変と感じるかは人それぞれなので、専門医取得難易度だけでは進路は決まらないです。

ただ自分が進もうとしている道で、この先専門医を目指せるのかどうかぐらいは確認しておいた方がいいと思います。

私はここをあまり確認せずに進路を決めましたが、留学・結婚・妊娠など大きなライフプランがある場合にはそこまで踏まえて考えるべきだと思います。

まとめ

駆け足でしたが私の経験談と意見はこれくらいです。

どこか参考になる部分はあったでしょうか?

いずれにせよ自分や家族の一生を左右しかねない大きな決断です。

皆さんが後悔のない進路選択をできるよう、お祈りいたします。

もし質問があれば言える範囲でなんでも答えます。気軽にコメントして下さい。

それでは今日はこの辺で。

皮膚科医ボブ

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